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根本(大阪)、気力で優勝を奪う ~「剣道日本」1977年7月号より~

根本(大阪)、気力で優勝を奪う ~「剣道日本」1977年7月号より~

(第16回全日本女子剣道選手権大会 大会レポートを再掲)

本日(2019年6月17日)放映された「おんな武士道~剣道八段に挑む女性たち」(NHK総合)に登場した根本道世教士と堀部あけみ教士。それぞれ剣風も人生も好対照なお二人ですが、剣道家としても指導者としても、剣道界に大きな影響を与え続けています。「 剣道日本」の過去の記事より、約40年前の、女子日本一を決める二人の熱い戦いをWebで再現。当時を知る人も知らない人も是非ご一読下さい。

過去三度の優勝をとげている川添(旧姓・桑原)、連覇をねらう黒須。のぼり調子の堀部ら、注目の女子剣士57名が集まって話題を呼んだこの大会、結局、一番激戦が予想されたブロックから根本道世四段(大阪)がはい上がり、決勝で堀部三段を破って念願の初優勝を飾った。

優勝した根本。剣道着が激しい稽古を物語る

重なる延長戦を超えて

 まず、優勝した動きを追ってみると、一回戦から川崎(京都)と延長四回を数える長い試合で、ようやくメンに降し、二回戦は昨年勝ちを許した黒須(栃木)との因縁試合。開始まもなく、機をみて根本がきれいにコテを制し先取すると、黒須も、よく動く根本に巧みにおどしをかけ、一瞬居ついたところにすかさず面を放ち延長へ。技にもう一つ冴えの見えない両者だったが、もつれ気味の体勢から出した根本の小手、きわどく決まり黒須は二連覇の夢をくじかれた。

 注目の川添(高知)を破って好調の荒木(福井)と当たった三回戦、ここでも根本は苦戦をしいられ、延長の末ようやくとび込み面を決め準々決勝へ。

 準々決勝は順当に勝ち抜いてきた辻(石川)との対戦。果敢な攻めをみせる辻に対し、疲れの色があらわれてきた根本だが、中盤、巧みにつっかけて居ついた辻のコテを斬ってそのまま時間切れ。根本は初めて延長なしの試合を演じた。

 渋谷(青森)、尼田(山口)、青田(神奈川)ら、国士舘勢の活躍が予想された第二ブロックからは、それら若手選手をかきわけて、ベテラン前田(群馬=五段)が、一本も敵に与えず準決勝まで進出してきた。

 根本対前田戦は、ハッとするような抜き面などで小柄な前田が押し気味に試合を進めるが、根本も力をふりしぼって応戦、延長四回となる。意を決した前田の飛び込み胴決す、と思われたが、勢い余りラインを超えた前田、三度目の場外で無念の反則負け。根本危い勝ちをひろう。

 第三ブロックでは、一回戦から堀部(茨城)‐赤峰(神奈川)の強剛同士の接戦がみられ、剣先の攻め合いなど、高度な技の応酬が展開されたが、堀部のコテの一本勝ちに終わる。

 それからの堀部は、村岡(宮崎)、佐藤(静岡)の名選手を圧して順調に勝ったものの、藤吉(福岡)との準々決勝からは攻めが欠け、後の先になりがち。藤吉には二本勝ちするも、第四ブロックから斉藤(千葉)に快勝して上がってきた足立(滋賀)との準決勝では苦しい試合運び。ようやくコテ一本勝ちをしめて決勝へ。

根本(左)と堀部、決勝での打ち合い

 延長につぐ延長で、精根尽き果てたかにみえた決勝前の根本―。やや冴えを失ったとはいえ、底力のある堀部に分ありとだれもが思った。しかし「ここまできたら」と気力をふるいたてた根本、試合開始から剣先に気迫がこもった。

 堀部が惜しい抜き銅をはらえば、根本も鋭くコテに出る。東西の女子剣士気力合戦、緊張した優勝争いとなった。互いに譲らず延長となってしばらく、打ち合いからヒョイと引いて出した根本のコテに、旗が上がる。会心の、とはいえないが「得意技が無意識に」とあとで語った根本の、気力で勝ち取った一本だった。

(おわり)

根本‐堀部の戦いはまだまだ続く… 第17回全日本女子剣道選手権大会 大会レポートはこちら

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