令和元年8月21日〜23日に行われた第49回全国中学校剣道大会、上位の戦いは剣道日本11月号(9月25日発売)に掲載していますが、ここでは誌面で取り上げられなかった試合や、掲載できなかった写真を紹介、熱戦の模様をさらに詳しくお伝えします。
男子団体
決勝 九州学院中(熊本)×久御山中(京都)
九州学院中が4─0で快勝を果たした。誌面に掲載できなかった写真を紹介する。九州学院の次鋒荒木、中堅中村、副将福岡は準々決勝以降の3試合で揃って勝利をあげ、万全の戦いぶりをみせた。
準々決勝 東海大翔洋中(静岡)×東海大浦安中(千葉)
東海大系列同士の対戦となった試合、2年前に3位の実績がある東海大浦安中に、3回目の出場で初の入賞を目指す東海大翔洋中が挑む。東海大浦安中が先手を取る展開で先鋒前田、中堅齊藤が勝利。しかし東海大翔洋中が次鋒山田、副将杉本が勝って二回とも追いついた。大将戦は引き分け、大将同士による代表戦となるが、東海大翔洋中の望月がメンを決め接戦を制した。
準々決勝 富雄中(奈良)×豊中十六中(大阪)
地元の期待を背負ってここまで勝ち進んだ豊中十六中が、次鋒金田の勝利でリードする。しかし富雄中はすぐに中堅山下の勝利で1─1とすると、そのまま迎えた大将戦で西浦がドウを奪い、逆転で初のベスト4進出を決めた。
準々決勝 九州学院中(熊本)×神戸中(三重)
九州学院中はこの前の2試合は接戦となったが、ここでは先鋒河野が引き分けたものの、次鋒荒木、中堅中村、副将福岡が3連勝、神戸中に快勝した。歯車が噛み合い始めた。
決勝トーナメント1回戦結果
小山三中(栃木)2(2)─0(0)下館中(茨城)
久御山中(京都)2(3)─1(1)芝中(埼玉)
東海大浦安中(千葉)4(7)─0(0)玉穂中(山梨)
東海大翔洋中(静岡)2(2)─1(1)満濃中(香川)
豊中十六中(大阪)2(2)─0(0)横浜中(神奈川)
富雄中(奈良)4(6)─0(0)伊集院中(鹿児島)
九州学院中(熊本)1(1)─0(0)連島中(岡山)
神戸中(三重)1(1)─0(0)奥田中(富山)
男子予選リーグ詳細
女子団体
決勝 新東淀中(大阪)×那珂川北中(福岡)
接戦となった決勝。副将戦、大将戦は一本ずつ取り合っての引き分けとなり、最後まで緊迫したが、結局は新東淀中の先鋒矢部の一本勝ちが勝負を決めた。
準々決勝 久御山中(京都)×土崎中(秋田)
久御山中が勢いに乗って相手を圧倒、先鋒水野、次鋒中田、中堅角田と3連勝で一気に試合を決めた。副将戦は敗れるも大将斉藤も勝利し4─1で快勝する。
準々決勝 那珂川北中×加古川中
先鋒戦引き分けの後、加古川中が次鋒前薗、中堅井上の勝利で那珂川北中を追い詰めた。しかし那珂川北中はここから副将重松(穂)、大将政野がともに二本勝ちし、鮮やかな逆転劇を演じてみせた。
決勝トーナメント1回戦結果
豊中十六中(大阪)2(3)代─2(3)幕張本郷中(千葉)
高川学園中(山口)3(5)─0(1)結城東中(茨城)
那珂川北中(福岡)1(1)─0(0)三瀬中(大分)
加古川中(兵庫)5(7)─0(0)安積中(福島)
松代中(長野)2(3)─1(1)菊池北中(熊本)
新東淀中(大阪)2(2)─1(1)神戸中(三重)
土崎中(秋田)3(5)─1(3)宇ノ気中(石川)
久御山中(京都)3(4)─1(2)生目中(宮崎)
女子予選リーグ詳細
男子個人
4回戦
中尾王真(大阪・菫中)×長崎祥太郎(山口・野田学園中)
留場啓伍(福島・清水中)×赤星陽生(岡山・連島中)
鈴木大輝(神奈川・保土ケ谷中)×望月謙(静岡・東海大翔洋中)
山口拓(長崎・長崎南山中)×平吹侑也(埼玉・芝中)
高島壮右馬(熊本・九州学院中)×内田雄敬(福岡・春日野中)
武田侑弥(佐賀・北茂安中)×西智弘(鹿児島・吉野中)
藤田将人(栃木・壬生中)×新倉大輝(神奈川・横浜中)
桐野光(岩手・花巻中)×内田大雅(宮崎・宮崎西中)
男子個人全結果
女子個人
4回戦
田中愛寿可(大分・杵築中)×今村真穂(京都・久御山中)
福園楓音(山口・高川学園中)×森川紗那(長崎・島原二中)
石島蒼依(栃木・小山三中)×中武優羽(熊本・尚絅中)
池田胡春(福岡・中村学園女子中)×眞下ゆず(群馬・境南中)
藤﨑柚萌(佐賀・三瀬中)×狩野紗也花(群馬・大胡中)
横江優那(兵庫・大原中)×島村咲愛(神奈川・潮田中)
時任心(東京・日体大桜華中)メ─ 竹内紫奈乃(島根・邑智中)
楠瀬瑠夏(香川・山田中)メ─ 横山雅(石川・宇ノ気中)
女子個人全結果
優秀選手
男子
高島壮右馬(九州学院中3年)
内藤慧(久御山中3年)
西浦尚希(富雄中3年)
望月謙(東海大翔洋中3年)
菊池玲偉(神戸中3年)
西野聡(小山三中3年)
神原康佑(豊中十六中3年)
加藤将真(東海大浦安中3年)
女子
二上愛美(新東淀中3年)
政野愛華(那珂川北中3年)
中田侑咲(久御山中3年)
勝馬桃子(豊中十六中3年)
北澤毬乃(松代中3年)
越野晴華(加古川中3年)
児玉杏菜(土崎中3年)
志熊萌(高川学園中2年
コラム
全校生徒50人の剣豪の里から
興東館柳生中(奈良)が初出場
現在は奈良市内となっている柳生の里。剣豪ゆかりの地の中学校が本大会初出場を果たした。人口減により平成27年に興東中と柳生中が統合され、興東館柳生中となったが、現在全校生徒数は約50人。その中で3年生は女子5人、男子5人、が剣道部と人数が揃った。本大会に出場を果たした女子チームはその3年生5人がメンバーで、1年生の女子1人が補員という構成。
しかし3年生はたまたま揃っただけで、他には2年生男子が1人と1年生の女子が1人だけ。3年生が引退すれば2人だけになってしまう。
「来年ちょっとは入ってくる予定ですが、団体5人はなかなか組めないと思います。10年ほど前までは(旧柳生中で)団体が組めたそうですが、それからはずっと揃わなくて、この子たちの学年が最初で最後のチャンスだったんです。なかなか県内で勝てなかったのですが、最後だけ勝てて……」
と浦久保治雄監督は話す。女子は全員が小学校からの経験者。柳生小学校の地域に柳生剣友会があり、そこで剣道をしていた。男子は初心者が2名いる。
全国大会出場のきっかけとなったのが、5月の奈良市民体育大会で強豪富雄中に大敗したことだった。そこから部員たちが変わったという。
「市民体育大会までは、僕ができるだけ稽古に行って、ああしろ、こうしろと言っていたんです。僕が来るまで稽古を始めないで待っていたくらいで、のんびりとしていました。しかしそこで負けてから、大将のお母さんが市道をしてくださっているのですが、ここで立ち直さなければ終わりやでと精神面の話もしてくださって。そこから僕が行かなくても稽古を始めるようになってきたんです」
と浦久保監督。すると、6月にあった市の総合体育大会(全中予選ではない)では、富雄中にギリギリで勝利を収める。それで部員たちはますます本気になり、自分たちできついメニューを課すようになったのだ。
「僕は何も言っていないんです。逆に無理するなよ、って言うぐらいになりました。バテて試合に出たら行けないので、それだけ気をつけながら。最後の予選では先鋒の子が二本取って、それで勢いに乗ってなんとか勝たせてもらいました。普通は出るはずのない学校なんですけど」(浦久保監督)
そうやって臨んだ本大会では、予選リーグ1試合目で桜丘中(岐阜)に2─0で勝利。次戦も安積中(福島)に対し、先鋒中田千智選手が勝利を収め予選リーグ突破の可能性が高まる。しかし中堅、副将戦に敗れ2─1で惜しくも逆転負けを喫した。初出場ながら充分に力を発揮したという結果と思われるが、大将の中田優希選手は、悔しそうにこう話した。
「目標は予選リーグ突破でした。上がりたかったです」
浦久保監督は技術と社会の教師で、剣道は三段。中学時代に剣道部をやめて、教員になってから剣道部顧問となって再開したが、その後バドミントン、サッカー、陸上などさまざまな部活の顧問を務めてきた。50歳を過ぎて体を壊して入院したこともあり、剣道部の顧問をできるところに転勤したいという希望を出し、たまたま統合で指導者がいなくなった興東館柳生中に赴任した。
「今は体調もいいです。子どもたちを育てようというより、自分の健康のため、最初の基本稽古から一緒にやって汗を流させてもらっています。逆に子どもたちに『無理しないで』と言われています(笑)」