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同じ記事を何度読んでも違った感慨が湧き出る不思議

同じ記事を何度読んでも違った感慨が湧き出る不思議

同じ記事を何度呼んでも違った感慨が湧き出る不思議

―休刊告知号(2018年/No.504)より―

安藤 雄一郎 (あんどう ゆういちろう) 編集部員

 われわれの主な仕事は月刊誌の編集、それと、連載されていた記事をまとめて1冊の本に上梓することである。読者の方から「ぜひ単行本に!」との声に応えることは編集部員の責務だと思ってきた。私の場合は力不足もあってさほどたくさんの書籍を発刊できなかったのだが、一つひとつの本に対する思い入れはある。かなり以前の記憶をたどっているため、時系列や中身があいまいなところもあるのだが、そのあたりはご容赦願いたい。

初心者のための剣道講座(平成12年11月)

 著者は、東京・巣鴨学園の小川春喜監督(注:当時)。まずは、「初心者」という対象を理解すべく、授業の模様を見学。巣鴨学園は「全員有段者主義」を掲げる珍しい学校で、全員が武道を授業で履修し、初段を取得させる方針である。“質実剛健”を体現しているような学校だが、授業で剣道を教えるときの小川監督は、実にソフトで分かりやすい言葉で生徒指導に当たっていた。ところどころに、初心者指導ならではの工夫があり、そのつど感心していたことを思い出す。

 著者は、東京・巣鴨学園の小川春喜監督(注:当時)。まずは、「初心者」という対象を理解すべく、授業の模様を見学。巣鴨学園は「全員有段者主義」を掲げる珍しい学校で、全員が武道を授業で履修し、初段を取得させる方針である。“質実剛健”を体現しているような学校だが、授業で剣道を教えるときの小川監督は、実にソフトで分かりやすい言葉で生徒指導に当たっていた。ところどころに、初心者指導ならではの工夫があり、そのつど感心していたことを思い出す。

 連載記事や単行本化にあたっては、後の記事にも出てくる川村典幸カメラマンや、当時デザインを担当していた沖田匡宏氏によるところが大きい。本というのはたくさんの方の手を借りて成り立っている。

 このときのモデルを務めてくれた中学生の本間寛史君だが、筑波大学へ進んで関東学生選手権にも大学の代表として出場を果たした。ハードな撮影モデルを受けてくれた方がその後にどこかで活躍してくれることに喜びを感じた、初めての体験かもしれない。

『実践のための剣道講座』(平成13年11月)

 同じく、巣鴨学園に引き続き通い詰めた。それまでの「初心者」対象から、一気に実践レベルを上げ、それぞれの技法を詳しく解説した。ある高校の先生から「先輩、そんなに技を公開してしまっていいんですか?」と心配されたそうだが、それほど詳細な内容だったと思う。連続写真の撮影は、映画撮影に使うような特殊な機材とフィルムを使い、最初にすべての技89手を撮影。後日改めて出直し、各技のポイントを聞いた。

 この取材で驚いたことはいくつもある。まず、すべての技に解説をつけられること。つまり、「この技は特に言うべきことはありません」とか「この技はできません」ということがひとつもなかったのである。さらに驚いたのは、小川監督が中段・上段ともなんの苦労もなく使い分けられておられたことだ。「指導者であれば、両方使えるのが当たり前」という生きた見本を目の前で見たときは、ただただ驚愕でしかなかった。

『宮崎正裕の剣道』(平成15年9月)

 本誌では、宮崎正裕氏が全日本選手権で初優勝を遂げたときから、折に触れて何度も取材を繰り返した。「それを一冊にまとめたらどうだろうか」と思ったのだが、それだけではかなり薄い本になる気がした。そこで、宮崎氏の技術についての連載を敢行し、それも加えた1冊にすればどうか、と思いたったのである。打診をすると「可」の返事。雄たけびをあげそうになったと同時に、「これは大変なことになった。日本一の剣士の技術をあれこれ聞くことになるのだ。変な質問はできない」と訳の分からない思考が頭の中でグルグル回ったのである。

 会ってみれば、「すごく気さくな方」というのが第一印象。それは今も変わることはない。限りなく実践を意識した技が網羅された一冊である。

『日本剣道の歴史 英訳付き』(平成22年5月)

 昔、ワーナー・ゴードン氏にインタビューをした際、「目次だけでいいから英語を併記してくれないか」とリクエストを受けたことがあった。そして、幾度もの世界大会でアメリカやカナダ、イギリスあたりが想像以上に強かったことを目の当たりにし、「これからは国際的な視点を持たなければならない。それを小誌から発信していきたい」と思った。ちょうど同じ時期に、筑波大学の酒井利信教授が、剣道の歴史を日英併記で出したいと思っており、タイミングがピッタリ合ったゆえに実現した企画である。英訳はアレック・ベネット氏(関西大学国際部教授)にお願いし、世界中に自信を持って紹介できる書になった。

 この書を出した後、アメリカ人剣士の半生記を連載した。ただ、その後、“世界”を意識した企画が組めなかったことは残念でならない。

『おとなの剣道上達講座』(平成22年8月)

 立川にある武道具店「南武堂」店主で剣道八段でもある波多野登志夫教士八段が、社会人に向けて剣道に対する考え方を説いた書。

 剣道書といえば、打ち方を解説したものがほとんどといえる。しかし、波多野氏はそれに加えて、「なぜそうするのか」というプロセスに目を向ける。その話を聞くたび、「社会人として生活していくうえでも共通しているなあ」と思うことばかりであった。

 驚いたことに、この本は読み返すたびに違った感慨を受けた。本は、買って棚に置いておき、読み返すべきもの。そのときどきで受け取る印象が変わる。それをはっきりと認識できた一冊である。

『剣道 世界一への戦い』(平成27年4月)

『剣道世界一への戦い』

 2015年の世界大会が日本武道館で開催されることを受け、「それでは、これまでの世界大会を1冊にまとめたガイド本をつくろう」と思って出したのが、この本である。

 小誌が創刊された年(1976年)に第3回世界剣道選手権大会が開催され、それ以降の大会報道はすべて小誌に保管されていた。それを倉庫から引っ張り出して整理しなおすのはなかなか骨の折れる作業だった。四方手をつくしたがどうしても発見できなかったデータもある。しかし、改めて整理しなおしてみると、いろいろとおもしろい発見もたくさんあった。そして日本のナショナルチームのメンバーの超豪華さも。

 なんとかして掲載したい、と思ったのは、第1回大会のメダル。福岡へ出向いて如水館の館長・池田健二氏が所有しているものをお借りした。もしかすると、このメダルはとんでもなく貴重なものなのかもしれないと思いつつ、そのメダルを拝むことができる幸福を感じた。

(おわり)

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