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スケトウダラは ニッポンの救世主⁉(日本水産(株))

スケトウダラは ニッポンの救世主⁉(日本水産(株))

「ニッスイ」の通称で親しまれる日本水産(株)は2011年には創業100周年を迎えた日本の大手水産・食品会社である。冷凍食品、フィッシュソーセージ、ねり製品、缶詰、健康食品など同社が手がける安全かつ美味しい食品は、日本中の多くの家庭で長く愛され続けている。日本の食卓を支えつつ、さまざまな分野での研究にも取り組むニッスイが2017年に発表したのが「スケトウダラタンパク質の筋肉増加効果について」。
「食べるだけで筋肉が増える」とも言われるこの驚きの説の真相をニッスイに尋ねた。

「高タンパク質低脂肪食」、「筋トレ」ブームで脚光を浴びたスケトウダラ

 スケトウダラはタラ目タラ科の魚で、一般的には「スケソウダラ」の呼び名のほうが馴染み深いかもしれないが、スケトウダラというのが正しいそうだ。

 北太平洋に広く分布し、漁獲量も多かったため、日本の重要な漁業資源として使用されてきたスケトウダラは、現在となってはアメリカやロシアでも利用されている。白身魚ゆえのあっさりとした味わいが特徴的ではあるが、身の傷みが早いために水揚げ地以外では鮮魚として見かける機会は少ない。消費者が目にするのは、スケトウダラからつくったすり身で加工された商品がほとんどだ。ニッスイでは古くからこのスケトウダラを有用な資源として用いてきたのだ。

 今回取材を受けてくれたのは関口洋一さん(取締役常務執行役員ファインケミカル事業執行)、中島秀司さん(食品機能科学研究所長)、内田健志さん(食品機能科学研究所副主任研究員)の3人。研究に関しては中島さんと内田さんが専門職だが、1979年入社のベテラン関口さんは、かつてはスケトウダラを漁獲する船に乗っていた時期もあるそうだ。

「ニッスイのスケトウダラの歴史は古く、冷凍すり身事業をはじめたのが1960年代の後半から。スケトウダラはそれまで資源として活用されていなかったのですが、当時はタンパク源もまだ乏しい時代。網を投げればイヤでもたくさんかかってくるこの魚をどうにか有効利用ができないか、と考え出したのがきっかけです。そこでニッスイが取り組んだのが大型船による事業で、獲ったスケトウダラをその場ですり身に加工、冷凍できる設備を搭載した船を造ったんです。私が乗っていたのは2万トンの船で、そこで働く人間は600人くらい。6カ月間ほどベーリング海で過ごしましたよ」(関口さん)

 スケトウダラが使用されるかまぼこやフィッシュソーセージ、ちくわ、白身魚フライなどは一般家庭の食卓でもすでに「当たり前」の存在。なぜこの食材が今になって注目を受けることになったのだろうか。

「私たちにとってもかなりの驚き。まったくの盲点でした」

 と語るのは中島さんだ。

「スケトウダラという素材は大手水産か実際に漁獲している方くらいしか取り扱わない魚。関わる事業者自体が非常に少ないため研究の対象になりにくかったのかもしれません」

 ニッスイがスケトウダラのタンパク質を研究しはじめたのは10年ほど前からだという。研究員・内田さんはこう振り返る。

「今、日本はタンパク質がブームですが、そのきっかけとなったのが2013年に始まった『健康日本21(第二次)』(21世紀における第二次国民健康づくり運動)でした。かつての方針はメタボリックシンドロームに重きを置いたものでしたが、それが2000年代になるとロコモティブシンドロームの予防へと変化したんです」

 ロコモティブシンドロームとは「運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態」であり、高齢化社会となった現在の日本では要介護の原因のひとつとなる。

「高齢化社会の問題のひとつに、入院していた高齢の患者が帰宅できない、という事態があります。例えば高齢者が手術を受けるために入院する。手術が無事に成功しても入院中の寝たきり状によって筋力が衰え、なかなか退院ができないというわけです」(中島さん)

 ある研究によれば、運動など何もしない場合、人間は20歳あたりから毎年1・5%くらい筋肉量が減っていくという。これが65歳以上となると3カ月ほどで筋肉量はマイナスになる。

「最近の研究によれば70歳以上の方々は一般成人に比べて1・2倍から1・3倍ほどタンパク質を摂らないとカラダを維持できないと言われています。以前は腎臓が悪い人はタンパク質を食べてはいけないと指導されていましたが、今ではそれも最低量のタンパク質は食べようという方向へと変化しているほどです」(内田さん)

 かつてのメタボリックシンドローム対策ではウォーキングなどの有酸素運動が注目されていたが、最近はタンパク質の摂取とともに筋力トレーニングが推奨されるようになり、その流行は美しいプロポーションを求める女性にも広がりを見せた。「高タンパク低脂肪食」「筋トレ」は一躍ブームとなり、赤身肉、プロテインなどにも世間の注目が集まり出したことから、ニッスイもスケトウダラのダイエット効果など未知の機能に期待を込めて研究を始めたというわけだ。その研究過程で偶然分かったのがスケトウダラの「筋肉増加効果」。

 今から5年ほど前のことだった。

写真右から、中島秀司さん(食品機能科学研究所長)、内田健志さん(食品機能科学研究所副主任研究員)、関口洋一さん(取締役常務執行役員ファインケミカル事業執行)。会社に剣道部はないものの、関口さんは剣道六段の腕前を誇る

自然と衰えていく速筋
その維持、強化は現代日本の課題

 そもそも筋肉は髪の毛ほどの細さの繊維が束なって構成されているが、大きく瞬発力をつかさどる速筋と持久力をつかさどる遅筋とに分けられる。ふたつの筋肉の違いはいくつかあるが、中でも顕著なのは速筋はどんどん太くなり、遅筋は洗練されていく、という特徴。それは陸上競技のスプリンターの肉体が筋肉隆々であるのに対し、マラソン選手は細身の体型が多いという例からも見て取れる。

 速筋と遅筋は加齢に伴って変化していく。ともに年齢を重ねていけばその量は減っていくが、遅筋がある一定量維持できるのと比べると速筋の減少率は高い。速筋は決してスポーツや競技の場面のみにおいて利用されるものではなく、日常生活の例えば椅子から立ち上がるだけの動作でも重要な役割を担うものである。減ってしまった筋繊維自体を戻すのは容易なことではないため、筋肉の維持もしくは繊維自体を太くして筋力を発揮できるようにする工夫が必要で、これは「寝たきり予防」という観点からも現代日本が抱える切実な課題といえる。

「ダイエット効果の研究として動物にスケトウダラのタンパク質を食べさせ続けていたところ、どうも筋肉が大きくなっているようだ、という報告がされました。また、遅筋が赤い色をしているのに対して速筋は白いという特徴があるのですが、解剖してその筋繊維を見てみると速筋の肥大化によって見た目にも白く変化していたんです。あくまで動物のレベルの研究結果ではありますが、50日間ほど摂り続けたことで筋肉量は5%から10%ほど増えていました」(内田さん)

 メタボリックシンドローム予防が注目されて以降、一時期は「油分カット」=「肉を食べない」という考えが広まり、結果的に日本のタンパク質の摂取量は戦後よりも低下していた。高タンパクブームの現在は当時よりもタンパク質摂取の意識は高くなったと思われるが、あくまでもブームと考えればいまだ無関心な人が多いのも事実。そんなタイミングで発見されたスケトウダラの「速筋の肥大化効果」。ニッスイは研究のテーマを「ダイエット」から「筋肉増加」へとシフトしていった。

 研究の過程においては次々と新しい発見があり、それらはいずれもスケトウダラが優秀なタンパク源であることを証明するものだった。そんな中、もっとも気になるのがやはりその「筋肉増加効果」。他のタンパク源には見られないこの特長の秘密とは──。

「スケトウダラのタンパク質は大きく分けて5種類の成分で構成されていますが、その中のミオシン、そしてコラーゲンのどちらかが筋肉を増やす有効成分なのだろう、というところまで研究が進んでいます。まだ途中段階なので明言することはできませんが、コラーゲンについてはすでに美肌効果などで注目度も高く、過去にも数々の研究がされています。その中に筋肉量が増えたというデータが見られないことから、おそらくミオシンが有効成分なのではないかと考えられています」(内田さん)

 とはいえ、発表当初の周囲の反響はあまり芳しいものではなかったそうだ。

「白身魚を食べて白筋が増える、なんてまるで冗談みたいな話だと言われて(笑)」と関口さんが語れば、中島さんも「研究は多くの先生方と共同でやっているんですが、当初この説については先生方は一様に『嘘だ』と(笑)。データが出るようになってやっと信じてもらえました」と笑う。

 内田さんが話をまとめる。

「通常、運動をすると筋肉痛になり、その後筋肉が再生して発達へとつながります。最近の研究結果では、スケトウダラを食べると運動をしたあとに筋肉内で起こるのと同じイベントが発生することが分りました。スケトウダラ30g(スケトウダラタンパク質4・5g)が入ったスープと普通のスープとを食べてもらう試験の結果、対象者の平均値で有意に除脂肪量が増加しました。また、それを運動と併用した試験では、通常6週間で筋力が増強するトレーニングを行ないながらスケトウダラを摂った結果、3週間で筋力が増加することが分かったんです。我々としては『増加効果が倍にならないかな』という淡い期待があったのですが(笑)、それでも『効果が早く出る』という特長は高齢者であっても運動選手であっても求める理想のひとつではないでしょうか」

 1日あたりのタンパク質摂取基準は男性で60g、女性50gで、筋肉の合成の関係上、3食均等に摂取するのが理想とされている(男性では1食につき20g)。3食の中でもとくに不足しがちなのが朝食時のタンパク質摂取。筋肉再生イベントのタイミングという意味からも、あまり運動をしない朝の時間帯にスケトウダラを食べるのがオススメとのこと。臨床試験の参加者が摂ったスケトウダラタンパク質4・5gと同じ量を、スケトウダラのみを使用した加工食品で摂るには、ちくわ1本、カニカマ40g、白身魚フライ60g程度を食べればよい。ただしこれらには塩分も含まれるので、塩分摂取を避けたい人は食べ過ぎには要注意。さまざまな食材、サプリメントなども含めて、バランスの良い食事を摂ることが望ましい。

筋肉の減少チェック

ふくらはぎの太さ 指輪っかテスト

自分のふくらはぎに両手の親指と人指し指をあてて輪をつくる。左右の指がつかないほどの太さが保たれていれば大丈夫だが、指が重なってしまうようなら注意が必要。持久走の選手や運動経験のある人は指がつく例もあるが、そうでないならば筋肉の減少が疑われる。

この記事を掲載した、2019年8月号では、食べることと飲むことに注目した特集を組んでいます。食事で力をつけたい方、必見ですよ!
https://kendonippon.official.ec/items/21465660

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