7回にわたって連載してきた「師の教え 指導者としての思い」が、今月号(5月号)をもっていったん終了となりました。祇園北高校で3年間藤原崇郎範士に学んだ鳴本敬一郎氏が、「今だから聞きたい事」を聞いたこの企画。「あのとき思っていたことはこんなこと」という答えを藤原氏から直接聞く事ができ、非常に貴重な体験ができた、と鳴本氏は思ったそうです。
藤原氏は現在全日本剣道連盟の副会長。広島県の高校教員を長く務め、指導する学校をインターハイ等に導いたほか、自身も全日本選手権、世界大会、全日本八段大会等で活躍を続けてきました。
鳴本氏は祇園北高校3年時にインターハイ個人戦で3位に入賞、国体では優勝を果たしています。筑波大学では「医学専門学群」に入学し、4年時にはインカレでの団体優勝を経験。卒業後はアメリカで医学研修も経験し、今は浜松医科大学教員を務めています。
最終回(2024年5月号)に掲載した、鳴本氏による「(対談を終えての)考察」を特別に公開いたします。
高校の進路で迷っているときに、「師を選びなさい」という(藤原先生からの)言葉に引き寄せられ、祇園北高校を選びました。個性豊かな同級生に恵まれ、彼らと過ごした時間から「楽しさ」の本質を教えてもらいました。また、藤原先生の教えは、剣道の技術に関する指導もありましたが、むしろ人材育成に焦点を当てたものであり、現在の私の人生や医学教育に大きな影響を与えています。「あのとき、どんな思いで、何を考えていたのか」について話を伺いながら、現在の私と同じ年齢であった藤原先生の考えに思いを馳せることで、当時の光景にタイムスリップする喜びを味わうことができました。
一人ひとりの学習者の可能性を見出し、それを支え続け、そして彼らを次のステージへと導くために、教育者がどのような視点や心構えを持つべきなのでしょうか。また、チームが、一人ひとりの個性を生かし合い、単なる総和以上の力と魅力を発揮するためには、どのようなアプローチが最適なのでしょうか。今回のお話から、私自身、いくつかヒントをいただいたように思います。そして、教育者が「燃え尽きない」ための方策も教えていただいたようにも思います。
最後に、Suzanne Koven 氏( 医師・ハーバード大学医学部教員)によるNew England Journal of Medicine(世界的に最も有名な医学雑誌)での一文で、思いを締めくくりたいと思います。学習者が安心感を抱きながら成長し、見えなかった可能性が見えてくるように支援できる教育者を目指して、また新たな一歩を踏み出したいと思います。
“ A mentor is someone who has more imagination about you than you have about yourself. ”
「メンター(教育者のようなもの)とは、あなたがあなた自身について持っている想像力以上に想像できる力を持っている人のことだ」