全日本学生選手権大会。準決勝を終えた星子啓太選手(筑波大学3年)は足をひきずりながら試合会場をあとにした。異変は、両足の前腿に起きていた。
準決勝の試合中、一本を取ってすぐ足がつってしまったのだ。足がつるという経験は初の経験だったという。
その原因は、水分補給にあった。
「栄養のことを勉強していたら、『砂糖が良くない』と。糖分を取ると血糖値が上がる。するとインスリンが大量に出る。それによって血糖値が下がってしまって、集中力がなくなるとかボーッとしてしまうという現象があるらしいのです」
そこで星子選手は、水しか飲まずに稽古に臨み、大会中も同じようにした。そうしたら、電解質が足りなくなってしまい、足をつってしまったのだ。
「準決勝が終わってから飲んでいたのも水です。本当はスポーツドリンクを水で薄めて飲むのが良かったのかもしれません」
それ以降は、足が伸び切った状態で棒のようになっていた。決勝戦は開始早々に面に跳び込んだが、「長引いたらダメだと思って決めに行きました」
が、一本は決まらず時間が経過。ついに「肉離れする」と思った星子選手はタイムを要求した。治療中、隣にいた鍋山隆弘監督からは「辞退をするのもやるのも自分で決めろ」と言われた。数分後、審判長から、「治療が長すぎるのでこれ以上かかるなら辞退したらどうか」と言われて、すぐに「やります」と返事をして治療はやめた。
最後は胴を決めて勝利を収めたものの、結局最後まで足はつったままだったそうだ。
(取材・本誌A)