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猛々しくも面白い ~東大剣道部こそ我が人生の原点~ 田中一穂 日本政策金融公庫総裁

猛々しくも面白い ~東大剣道部こそ我が人生の原点~ 田中一穂 日本政策金融公庫総裁
田中一穂 日本政策金融公庫総裁

構成=編集部 協力=日本政策金融公庫

田中一穂(たなかかずほ)
日本政策金融公庫総裁

1955年(昭和30年)10月8年生まれ、64歳。東京都出身。東京学芸大学付属高校、東京大学法学部卒。1979年、大蔵省(現・財務省)に入省。2015年7月、財務事務次官に就任。2016年6月退官。同年10月、東京海上日動火災保険株式会社顧問。2017年12月より日本政策金融公庫総裁。剣道四段。

毎年社会に有為な人材を多く輩出している東大剣道部。田中一穂さんもOBの一人だ。「東大剣道部」を卒業後、大蔵省(現・財務省)に入省すると医療改革や消費税など国の難問に果敢に取り組み財務事務次官に就任、現在は中小企業の支援やコンサルティングを行なう日本政策金融公庫の総裁として活躍。

組織のリーダーとして個の力を2倍にも3倍にも倍増させる組織力を熟知する田中さん。その原点は東大剣道部にあるという。

田中さんが現役時代の東大剣道部といえば、昭和50年の東海大学を破る大金星を挙げたのを皮切りに、5年連続で全国出場を果たした黄金時代(※)。

当時の東大剣道部とはいかなる「組織」だったのか? 話を伺った。  

※詳しくは、「剣道日本」2017年5月号の特別企画「大金星 本命を倒した理由」をご参照。


「当時部員は総勢50名を超えていて、競争が熾烈でした。先輩も立ち居振る舞いが恐ろしい方ばかりで、こちらが生意気な態度を取るとものすごく怒られた。私は生意気だったので先輩によく足を引っ掛けられて倒されていましたし、掛かり稽古でも、今はありえないかもしれませんが、5分以上の掛かり稽古も時々あった。当時は「参りました」といってもやめさせてくれなかったので、『このまま血反吐吐いて死んじゃうんじゃないかな』といつも思っていました。非常に猛々しい雰囲気がありました。稽古に行くのが本当に嫌でしたよ」

― たくましいを通り越して、猛々しい。およそ世間一般の東大のイメージとはかけ離れています。苛烈な稽古が続く中で、やめたいとは思わなかったのでしょうか?

「それはありませんでした。稽古が始まるとしごかれるし、おっかないのだけど、ひとたび宴会が始まるとめちゃくちゃ面白くて、先輩・後輩で飲んでも同期で飲んでも面白い。私は剣道部の宴会が好きだったんです。宴会大好き男(笑)。どんなに怖い先輩でも宴会になると楽しい。ま、圧迫感のある宴会なんだけど(笑)、それはそれで面白い。マンガの『花の応援団』そのものみたいな面白さがありました。振り返ると良い経験だったと思います」

―良い経験だったとは?

「耐性ができたというか、役所には嫌味な先輩がいるとしても剣道部にいたような恐ろしい先輩なんて1人もいません。私も相当厳しい仕事を経験してきたので、メンタルが病む一歩手前になったことは何回もありました。しかし、どこか攻撃的な性格なんでしょうね、自己防衛のために攻撃を受けた時は攻撃で対応してきました……上司も部下も大変だったと思います。これは剣道そのものより、剣道部の4年間の生活そのもので培われたのかなと思います。ある種とてもストレス溜まるところだったので。体育会なんて圧迫感の塊みたいなものですから。(笑)上下関係もあり、試合結果への義務感もあるという」

― 使命感や責任感を強く感じる中、4年生の時はレギュラーとして活躍されています。

「4年生で初めてレギュラーになったものの、プレッシャーをものすごく感じていました。『オレたちの代で連続出場が途切れるのではないか?』って。私は中堅か三将あたりのポジションでしたが、この試合は覚えておきたいなんていう立派な試合をしてないから思い出に残る試合なんてありません。(笑)全日を決めたときも無我夢中でした」

「ようやく理合の面白さに目覚めた」と笑う田中さん。
しかし学生時代に得意にしていたという跳びこみ技は今でも健在 (部員談)

― ご自身もやはり恐ろしい先輩でしたか?

「私もかなり圧迫男だったと思いますよ。三菱重工取締役社長の泉澤(清次)さんは私の3個下の後輩ですが、彼は私に会うといつも私から受けた仕打ちについて話をする(笑)。後輩からすれば相当厄介な先輩だったかもしれませんね。でも自分は剣道部で4年間過ごし、この組織について圧迫感はあるけれど面白いなと、非常に気に入っていました。私は『この組織に染まれよ!』って言いたいタイプなんです。『お前いいぞ、この組織』って」

―圧迫感はあるけど面白い。体育会とはそういうものですよね。

「人間は24時間剣道だけ考えていられるわけでないから、どんなに剣道が強い人でも別の部分がある。だからとことん付き合うと面白いんですよ。東大剣道部にはキャラの立つ人間がたくさんいて、濃厚に接触していると、否応なしに人間の多面性や興味の世界へとはまっていく。普通の学生生活ではまず味わえません。もちろん、社会人でも似たような経験はありますが、(剣道部は)もっとダイバーシティに富んでいる。官僚になる人もいれば雑誌編集長になって役所を攻撃してきた人もいる(笑)、民間企業に進む人もいれば研究者もいるし、全く違いますよね。大学の同級生の友人とは社会に出てからも会いますけど、本当の意味での友だちといえば、やはり剣道部の仲間です」

― 田中さんにとって東大剣道部とは?

「偉そうなことは言えないのだけど、剣道部とはひとつの組織。いわば、社会に出る前の予備練習、人生修業の場です。こういうものに入らない学生さんと全然違うと感じています。厳しい上下関係や、東大剣道部に傷をつけてはならないという使命感や、同期のつながりの強さ。私は剣道は強くなかったけれど、東大剣道部で社会性を育ませてもらいました。東大剣道部は、人生の原点です」

田中さんは現在、財務省剣道部会長を務めている。財務省在職中はほとんど稽古ができず審査も一切受けなかったが、東京海上の顧問になった頃に再開。2年前に四段を受審して、見事一発合格。昇段がモチベーションとなり、五段に向けて稽古回数が少し増えているそうだ
剣道日本5月号

田中一穂氏のインタビューは『剣道日本』5月号に掲載しています。
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