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それは社長の一声から始まった 「株式会社ランテック」

それは社長の一声から始まった 「株式会社ランテック」

株式会社ランテック剣道部

2018年創部。初年度は7人でスタートした剣道部員は2020年1月現在16人(男子12人、女子4人)。部員は九州と関東にいて、新設された自社道場や、地元の道場でそれぞれ週3回稽古に励んでいる。定期的に実施される自社道場での合同稽古参加時の交通費は「全額支給」と会社側の支援も手厚い。来年度は部員が27人になる予定

剣道部員と大会の応援にかけつけた社員。全日本選手権に出場した経験を持つ社員(後列右端の森田行平氏。九州産業大学出身)をコーチに、さらなるレベルアップを図る(写真提供・(株)ランテック)

 食品定温物流で全国展開を図るランテック(資本金5億1980万円、本社・福岡市博多区)は、2018年5月、山中社長の肝いりで剣道部を創設し、2019年4月には車輌・設備管理部(福岡県久留米市宮ノ陣町)の久留米研修施設内に剣道場も完成させた。

「僕が創部に踏み切ったきっかけはいくつかあります。当社は、冷凍冷蔵物流のオンリーワンを目指すという旗印を掲げているわけですが、常々、従業員が共感し士気の向上につながる仕事以外の旗印がほしいと考えていました。二つ目は、僕が高校時代剣道部に所属していたことに由来します。道場もない、運動靴を履いて稽古をする劣悪な環境ではありましたが、剣道観戦は今でも好きです。そんな折、『剣道部を作りたい』という話が現在の剣道部部長兼監督の原から上がりました。

 当社の親会社・センコーには柔道部があります。同じ“武道つながり”もあり、それ(剣道部創部)は良い考えだ、新卒採用のPRにもなる、という話になったわけです」(山中社長)

 そのうえで「剣道部を作るならば道場が必要です」という提案に「よし、やってみろ」という社長の“一声”で、同社発祥の地である福岡県久留米市に2019年4月に剣道場が新設され、大学や高校の剣道部指導者、九州電力、西日本シティ銀行、三菱ふそう、福岡トヨペットの各剣道部を招いて剣道部落成記念稽古会も催された。

落成式を行なった際の新剣道場。
今後も各地域に道場をつくることを検討中(写真提供・(株)ランテック)

「ランテック」に剣道部あり!
を目指して

 剣道部創部の目的はそれだけではない。昨年初参加し、ベスト32に入る大健闘を見せた全日本実業団剣道大会でのこと。隣にいた会社の応援団からは、「ランテックってどこの会社?」という声が聞こえてきたという。

「剣道部員の頑張りが実業団大会での結果にもつながり、そうすれば知名度も上がる。もちろん仕事が一番ですが、剣道部をただ試合に出場させるのではなく、『ランテックに剣道部あり』と言われるようになるために、全社を挙げて剣道部を応援する仕組みを作ってほしいと指示を出しました。

 道場があることは、実業団でも剣道を続けたいと思っている学生にアピールできます。加えて全社応援体制が整っていることは、部員のモチベーションアップにもつながります。当社には物流に関わる従業員は2700人おります。従業員の日常会話で剣道部の活躍が俎上に上がり、我が子に『うちの会社の剣道部強いで。おまえもランテックで剣道やったらどうや』と言ってもらえるようになれば、従業員全体の士気と団結力も上がると思っています」(山中社長)

企業が「剣士」に
求める戦力とは

 山中社長は「サラリーマンに必要なのは頭の良し悪しではない」ときっぱり。

「剣道経験のある学生は、上下関係がきちんとしている上に粘り強く、体力がある。また礼儀正しく、しっかり挨拶ができる。仕事も剣道もまじめに取り組む姿勢は、他の従業員の『剣道部を応援したい』という気持ちにつながります。剣道を通じて従業員の模範となる人間に成長し、いずれは実業団でも日本一になって欲しい」(山中社長)。

 監督就任後、全国の大学剣道部を訪問しているという原弘規さん(取締役)はこう語る。

「剣道部に行きますと、『この子はレギュラーではないですが……』『「少し横着なところもありますが……』と言われることがありますが、『それはわが社が育てますから』とお伝えしています。選手生命はせいぜい30代前半まで。その後が大事です。剣道を通じて、仕事の中でも活躍できる人材を育成することが会社の発展につながると信じています」

 剣道部員の中には、インターハイに出場した人や、玉竜旗で3位になった人、大学で全日本学生東西対抗試合に出場した人もいるという。「しかし、その先(進路)で迷い悩み、当社で剣道部が創部された情報を聞きつけて、仕事と剣道を両立したいと入社してきた人もいます」と原監督。

山中社長(右)と原弘規取締役(左。剣道部部長兼監督)。原さんは1964年生まれ。剣道五段。福岡県八女市黒木町出身、旧黒木高校、久留米大学卒業(写真撮影・窪田正仁)

 来年度の内定者のうち、体育会系剣道部出身者は男子6人、女子は5人。「剣道部がある、剣道場がある」という情報が各大学にも広がりつつある状態だという。

 社会に出て剣道を続けるなら警察官か刑務官、もしくは教員と思われがち。剣道人口は柔道人口の約10倍いますから、当社は剣道を続けたいと考えている学生の受け皿でありたいと思っています」(原監督)

「当社には職種がたくさんありますから、来年以降も剣道部出身の大卒のみならず、高卒採用も考えています。また、今後部員が増えることも考え、関東や関西でも自社道場設立が必要になるでしょう。

 親会社であるセンコーにはすでに柔道選手を引退した人がたくさんいますが、リーダーシップがあって、現場の責任者になっています。当社には学閥も派閥もありませんから、剣道部員も選手を引退した後、そんな風に成長し役員までなってくれれば」(山中社長)

取材◆清水薫

山中一裕
株式会社ランテック代表取締役社長
1949年生まれ。大阪府堺市出身。大阪府立鳳高校、立命館大学卒業後、センコー(株)入社。センコーのグループとなった(2014年)(株)ランテックの代表取締役社長に就任(2016年4月)。鳳高校時代には剣道部に所属(東京本社にて。撮影・窪田正仁)

編集部より

この記事は2020年2月号に掲載しています。2月号の詳細はこちら。

https://kendonippon.official.ec/items/25385265

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