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【インタビュー 2019年12月号掲載】学生王者、今は医療に携わる。鳴本敬一郎さん(静岡・森町家庭医療クリニック院長)1

医学部生が体育会の剣道部に入ること自体もめったにない上、剣道部内でレギュラーの座を獲得することはさらに高い目標といえる。
そうした壁を、筑波大学で突破したのが、鳴本敬一郎氏だ。
さらにはそのメンバーで4年時に全国大会で優勝を果たした。
近年、学生大会で日本一になった医学部生はおそらくいないだろう。
現在は静岡県森町で新たな医療を目指して奮闘中の鳴本氏に、現状、学生時代の取り組み、医学と剣道に通ずるものなどを語っていただいた。
(編集部注 取材は2019年9月に行いました)

 厚生労働省が「19番目の専門医」として、総合診療という項目をつくりました。私が診察している「家庭医療」というのは、これに属します。諸外国では、日本のように「◯◯が痛いから◯◯科に行く」のではなく、まずはかかりつけの医師に相談して、その中で解決できることは解決していくのです。

「森町家庭医療クリニック」では、僕のような家庭医が、その人の健康をずっと診ていきます。妊娠すれば産婦人科の役割を担い、妊婦健診を行ないます。赤ちゃんが生まれればお母さんと赤ちゃん両方の様子を診ます。よくある健康問題を全部総括して診ていく。必要があれば、その領域の専門の先生に任せますが、そこでやっている治療も把握して、ずっと僕も継続してその人を診ていきます。

 たとえば「頭が痛い」と病院に来たとしても、脳出血、脳腫瘍、片頭痛、鬱、顎関節症などといったように複数の可能性のある病気から適切に診断し治療するために、相手の話を充分に聞かなければなりません。また、その人がどんな経験を経て診察に来たのかを理解し、信頼関係を築きながら、どこをゴールにするか、相談しながら治療をする。家族の方と話をすることもあります。

 筑波大学を卒業した年、横須賀にあるアメリカ海軍病院で、1年間インターンシップとしてトレーニングをしました。その後はアメリカに渡米し、5年間生活しました。

アメリカ海軍横須賀病院にて1年間研修を重ねた

 最初の3年間は、アメリカ中部にあるミネソタ州で家庭医療専門医の資格をとるためのトレーニングをしました。ローテーションをしながら、3年かけて自分の患者をずっと診ていく。修了すれば、試験を受けて、家庭医療専門医の資格が取れます。

 次の2年間は、そこからさらに東にあるピッツバーグという街で指導医になるための研修を受けました。研修プログラムを運営していくために必要なリーダシップスキルやマネジメントなどを学びます。それと同時に、診察室の一対一でのスタイルではなくて、地域・集団の健康をどうすればいいか、という視点からの勉強もしました。

ピッツバーグの研修時にて、スタッフらとともに
アメリカでの研修後、エクアドルで2カ月間メディカルボランティアを務めた

 静岡県が、医者不足解消のひとつの手段として、総合的に診療のできる医者を育てて、地域医療の再建に貢献するという大きな目標を掲げていました。その医療が、元々僕がアメリカでやっていた医療の形だったので、「ぜひやりたい」と思い、静岡に来たのです。(つづく)


(なるもとけいいちろう)昭和54年1月広島市生まれ。祇園北高校時代にインターハイ個人3位・国体優勝等の実績を残し、筑波大学医学専門学群に入学。4年時に全日本学生優勝大会で優勝を果たす。大学卒業後、アメリカで5年間医学を学んだ後、2011年から静岡県森町に設立された「森町家庭医療クリニック」で勤務する。剣道六段。

※鳴本氏のインタビュー記事は、2019年12月号特別企画「医学生と剣道」内に収録しています。
https://kendonippon.official.ec/items/24213423

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