坂井伸之山口大学教授 鉛筆のような棒と、先端におもりのようなものがついた棒があります。これが倒れるときの運動方程式を、下のようにあらわすことができます。実験をするまでもなく、右側の棒のほうが早く先端が加速するということが、数式で証明できるのです。
なぜ、剣道で「正しい姿勢」を強調するのかが、これに関連します。直立した状態から倒れこむと、一本の棒に近い状況になります(写真2)。
一方、腰から上を垂直にし、上半身が腰に乗った状態にすると、棒である足の上端、つまり腰に、上半身がおもりとして乗っていると考えられる。なので、こちらのほうが早く加速ができるのです(写真1)。
「良い姿勢で」というのは見た目がいいだけでなく物理的な意味があるということです。ほかのスポーツでも言えます。たとえば、走る動作もそうです。
竹田隆一山形大学教授 スタートから加速するところだけはしばらく前傾姿勢ですが、ある程度スピードに乗ったら姿勢を崩さずまっすぐに走るようにと、陸上部の先生も指導されるそうです。フラフラする選手は減速していきます。
先日、全日本学生選手権の審判をしまして、そこに坂井先生も来ていたのですが、坂井先生から、「強い人は上半身が動かず移動している」と指摘されました。フラフラしている人は序盤で負けているんだそうです。
※編集部より
このほか、「後ろ足のかかとを上げすぎない」「大きく振る」「打った瞬間に力を抜く」「茶巾絞り」「腰から打つ」といった、昔から当たり前とされる教えについて、力学・物理学的に合理的かどうか、徹底的に解説しています。
全文記事は、剣道日本8月号に掲載